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不動産競売における無剰余取消について
不動産競売手続を申し立てた場合に、優先する担保権者がいた場合には、買受可能額が手続費用と優先債権の見込額を超えない場合には、差押債権者にその旨通知することになっています(民事執行法63条1項、無剰余通知)。
無剰余通知を受け取った差押債権者は、無剰余回避のための措置をとらなければなりません。
現実的に取り得る措置としては、優先債権者の同意を得るという手続をとることになります。
優先債権者の同意を得たことを通知を受けた日から1週間以内に裁判所に証明しなければなりません(民事執行法63条2項)。
優先債権が複数ある場合には、かなりタイトなスケジュールになります。
裁判所は、優先債権者が法人である場合には、資格証明や印鑑証明を添付することを求めてきます。
また、想定していなかった優先債権として、公租公課庁(市県民税等の滞納)が表れることもあります。
不動産に抵当権等を設定していたとしても、法定納期限が抵当権等設定よりも前である場合には、公租公課が担保権に優先してしまうのです。
なお、執行裁判所は、差押債務者について、税務署、市町村役場、都道府県税事務所に催告を行う運用となっているため(民事執行法49条2項3号)、登記簿謄本では確認することができなかった滞納している税金が担保権に優先する債権として表れることがありますので、要注意です。
無剰余通知を受け取ったら、すぐに優先債権者に連絡をとり、同意書を取り付けて執行裁判所に提出しなければならず、これに成功しない場合には、通常60万円程度予納している予納金の一部は返還されないことになってしまいます。
無剰余取消となるケースが多いのは、優先債権者に同意を得ることが難しいからかもしれません。
弁護士伊藤拓