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借金を整理して生活を豊かにするには?[債務整理のあるべきやり方]
一回目のコラムは当事務所に相談が多くなっている債務整理に関する内容です。
ご相談者様の債務状況やご要望に合わせた法的手段をご紹介してまいります。
債務整理とは、支払いが困難な状況におかれた債務者が、債務を返済可能な状況にすることです。
それでは、返済可能な状況にすればいいのでしょうか?
下の図を見てみましょう。
会社員のXさんは、3社の金融会社から合計200万円の借金をしています。
手取り18万円の収入に対して、月にいくらであれば債務を返済できるかを考えてみます。
Xさんの1月の支出は以下のとおりです。
これでは1月の収支はゼロで、返済に回すお金はありません。
どうしたらよいでしょうか?
①食費を半分の30,000円にする。
②交際費を0円にする。
なるほど、こうすることで50,000円は返済原資に回すことができますね。
それでは、A社からC社との間で交渉をしてみましょう。
毎月50,000円で200万円を返済するのですから、元金だけでも40回払いとなります。
食費30,000円、交際費0円を3年以上も続けることができるのでしょうか?
時々は、美味しいものを食べたくなるかもしれませんし、誰かに誘われて仕方なく参加しなければならなくなる飲み会などもあるでしょう。
そのような返済計画を立てることができたとして、債務整理ができたといえるでしょうか?
これまでの債務整理では借入期間が長期に渡っていたので、
利息制限法の上限を超える貸付(いわゆるグレーゾーン金利)を行なっていた部分の利息をカットすることで総支払額を減額していました。
ところが、平成18年の最高裁判決(最高裁判所第二小法廷平成18 年1月13日判決)により、グレーゾーン金利が違法であることが明確となり、貸金業者は新たな貸付について、平成18年以降徐々に利息制限法の範囲内で貸付を行うようになりました。
そのため、平成30年の今日ともなると、グレーゾーン金利のまま借り入れをしている方はほとんどいません。
そのため、グレーゾーン金利の利息をカットして、総支払額を減額することができないケースが多いのです。
そのため、任意整理を行なうにあたっては、無理なく、継続的に、返済を続けることができるように返済計画を家計収支をよく考えてから行う必要があります。
上記のような、食費や交際費を無理に削って返済計画を立てることは返済が滞るリスクが高いといえるでしょう。
民事再生について、最高裁判所のホームページでは、以下のような記載となっています。
個人債務者の民事再生手続は,通常の民事再生手続を簡素化した手続ですが,
(1)将来において継続的に収入を得る見込みがあって,無担保債務の総額が5000万円以下の人(小規模個人再生)や,
(2)その中でも,サラリーマンなど将来の収入を確実かつ容易に把握することが可能な人(給与所得者等再生)が申立てをすることができます。
この手続きにおいて再生計画が認可され,債務者が再生計画のとおりに返済すると,残りの債務の免除を受けることができます。ただし,その再生計画の内容は,原則として3年間で分割して返済し,その返済する総額が,債務者が破産手続を選んだ場合に配当される額を上回らなければなりません。また,返済する総額の最低額は,無担保債務の総額により定まっており,返済する総額はこの金額を上回らなければなりません。具体的な最低返済額は,次のとおりです。
① 無担保債務の総額が100万円未満の場合は無担保債務の総額以上
② 無担保債務の総額が100万円以上500万円未満の場合は100万円以上
③ 無担保債務の総額が500万円以上1,500万円以下の場合は無担保債務総額の5分の1以上
④ 無担保債務の総額が1,500万円を超え3,000万円以下の場合は300万円以上
⑤ 無担保債務の総額が3,000万円を超え5,000万円以下の場合は無担保債務総額の10分の1以上
⑥ 民事再生手続は裁判所を通じて、債務を返済可能な程度に減額し、再生計画に対する債権者の決議を経て、返済を続けていくことです。
個それでは民事再生に関する3つのポイントをみてみましょう。
民事再生は原則3年間ですべての債務を返済することになります。
500万円未満の債務であれば、100万円を返済するという計画もあり得ます。
そうすると、一ヶ月あたり約28,000円の返済となります。
通常は、3ヶ月に一度債権者に振り込むという方法をとりますので、100万円を返済する場合ですと約84,000円を3ヶ月ごとに12回支払えば良いということになります。
仮に500万円近くの借金があったとしても、月28,000円の負担を3年間続ければ借金がなくなるのです。
民事再生手続では、利息(将来の分)がすべてカットされます。
そのため、返済に際して、将来の利息分を考慮する必要がないのです。
任意整理では、将来利息のカットが問題となりますが、利息制限法の範囲内の利息を支払う契約である場合には、法律上利息カットを求めることはできないため、個々の債権者の判断となります。
自宅を住宅ローンを使って購入した人であっても、民事再生は利用可能です。
「住宅資金貸付債権に関する特則」という制度があり、住宅ローンについてはこれまで通りの返済を続け、住宅ローン以外の債務について債務を減額し、返済する方法です。
住宅ローンだけ従来通り支払い続けることができることに債権者公平の観点から違和感がないではないですが、住宅は生活の本拠であり、経済的な再起更生を図るためにはやむを得ないという立法判断だと思われます。
破産手続となると、自宅は手放さなければなりませんから、住宅ローンを支払い続けながら債務整理をできるという点で大きなメリットがあります。
債権者の合意が必要なので、個人の債権者が含まれる場合には決議が否決される恐れがあることです。
しかしながら、債権者に個人が含まれない場合には、再生の決議に反対するケースは稀です。
なぜなら、個人について民事再生計画を否決した場合、破産手続に移行し、全額返済を受けられなくなる可能性が高いため、一部だけでも返済を受けた方が合理的と判断されるからです。
破産手続は、通常破産手続(破産者の財産を換価して、債権者に公平に分配する手続き)と免責手続(法律上の支払義務を免除して、破産者の経済的な立ち直りを助ける手続き)を並行して進めることになります。破産手続では、債務者のすべての財産を処分しなければなりません。しかしながら、生活に必要なすべての財産を処分されてしまうと、生活がままならなくなり、経済的な立ち直りが図れなくなります。
そこで、生活に必要な財産については、基本的には処分されない運用となっています。ただし、自己所有の不動産や高価な腕時計など財産的価値のあるものは処分しなければなりません。また、財産を隠したりすると重大な犯罪行為となり、免責許可決定を受けることができなくなる可能性があります。破産手続においては、裁判所に収める予納金(個人の場合通常は20万円前後)を納める必要があります。破産手続によって、免責許可決定を受けると、以後7年間は免責を受けることができなくなりますし、二度目の破産をした場合には、より厳しく免責許可をするべきかどうかを審理されることになります。