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離婚したらもらえるお金は?
1 慰謝料
⑴ どのようなときに慰謝料が認められるのか
慰謝料は、「権利または法律上保護される利益」が侵害されたときに発生する(民法709条)ものです。典型的には、不貞(原則として肉体関係)や暴力があったときに認められます。
相手に原因があって離婚をした場合であっても、必ず慰謝料が認められるわけではありません。
⑵ 「証拠」が重要!
慰謝料については、支払いを求める側が、「慰謝料が発生する事実があること」=権利利益の侵害事実を証明しなければいけません。裁判官という第三者が見たときに、「権利侵害があった」といえることが必要になるので、「証拠」が重要となります。
どの程度の「証拠」があれば、裁判官に「権利侵害があった」と認めてもらえるかは、慰謝料を求める理由によっても異なります。たとえば、「特定の女性と親しげに毎日連絡をしていた」という事実、証拠があったときには、不貞を疑うのが一般的な感覚ではあると思いますが、連絡の内容によっては、それだけでは「不貞があった」と認められないことも多くあります。裁判になったときの見通しについては、弁護士に相談して判断したほうがいいことが多いように思います。
⑶ 時効は3年間
慰謝料請求権の時効は3年です。
一般的な慰謝料請求権の時効は、慰謝料請求をする事実の発生時または、請求先を知ったときから3年ですが、離婚原因となった事由についてであれば、その事実があったときから3年ではなく、離婚時から3年と判断されることもあります。
ただし、3年以上昔の事由をもとに、離婚と一緒または離婚後に慰謝料を請求する場合には、時効にはかかっていなくとも、一度は許して夫婦関係を継続したという判断になりやすいため、慰謝料が低額になることが多いですので、昔のことを理由とした慰謝料請求については、時効にかかっていないか、時効にかかっていないとして請求した場合の裁判での見通しについては、慎重な判断が必要です。
2 財産分与
⑴ 財産分与とは
離婚原因にかかわらず、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を原則として半分にするというものです。
⑵ 財産分与の対象となる財産は?
財産分与の対象となる財産は、あくまで「婚姻期間中」に「夫婦」で築いたものに限定されます。
相続財産や、交通事故の慰謝料などは、受け取った人個人の固有財産となり、財産分与の対象とはなりません。
財産分与の対象となる財産は、典型的なものとしては、預貯金、不動産、生命保険(原則として、別居時点での解約返戻金に相当する額)、退職金(別居時点での価値に換算するのが原則です)などです。
⑶ 別居後にお金を支払って財産が減少している場合
あくまで財産分与は、「婚姻期間中」に「夫婦で築いたもの」を精算する制度なので、別居後にお金が減っているかどうかにかかわらず、原則として、別居時を基準として決めていきます。ただし、別居後の事情が考慮されることもあります(清算的財産分与)。
⑷ 家財を財産分与で求めることができるか?
別居時に自宅に置いてきた家財は、時価が低いことから、財産分与の対象に含まないことが通常です。
どうしても家財の引き渡しを求めたいとき(嫁入り道具、子どもの初節句のお祝い等)は、財産分与の方法ではなく、所有者や家のなかの所在地(執行のためにある程度の特定が必要です)が明確であれば、別途動産引き渡しなどの方法で求めることもないわけではありません。(ただし、奏功する可能性は高くはありません。)
⑸ 財産分与と税金について★
① 分与する側にかかる税金
現金または預貯金等の金銭債権の分与は、譲渡所得に関する課税問題は生じません。
他方、不動産を分与する場合には、分与した側に税金が課せられます。課せられる税金は譲渡所得税ですので、分与時の時価が取得時を上回り、譲渡益が生じている場合に限られます。居住用財産の場合には、要件を満たした場合には、特例措置の利用が可能な場合がありますので、税理士などにご相談して確認したほうが確実です。
ただし、税務署は実質的に「財産分与」といえるかどうかをみて課税を決めます。たとえば、相続財産だったものを夫婦名義にしていた不動産を離婚に伴い精算したようなケースでは、譲渡税は課せられないことがあります。
② 分与をうける側にかかる税金
財産分与にあたっては、分与をうける側には贈与税は課税されないのが原則です。ただし、財産分与として相当な額を超えているような場合には、贈与税の対象となることがあります。また、慰謝料は非課税です。
不動産の分与を受けるときには、分与を受ける側に不動産取得税が課税されるのが原則です。ただし、「精算目的の財産分与」の場合には、課税されないこともあります。
⑹ オーバーローンの不動産の財産分与について
離婚時の不動産の時価から特有財産(頭金等を独身時代の貯金から出した場合等)と住宅ローンの残額を控除した額が清算の対象となるのが原則です。
具体的な計算方法は、頭金の評価により、いくつか方式が分かれています。
3 婚姻費用・養育費
⑴ 婚姻費用とは?養育費とは?
別居後離婚成立前は婚姻費用(妻と子の分)、離婚成立後は養育費(子の分のみ)がそれぞれ問題となります。
⑵ 婚姻費用・養育費の決め方は?
裁判所のホームページで公開されている算定表は「最低基準」と言われていますが、実務上、算定表通りになることが多いです。
実際に算定表を確認していただければわかるように、婚姻費用や養育費は、基本的には夫婦双方の収入で決まります。生活に実際かかっている額を書き出してご相談に来られる方もいらっしゃいますが、実際の生活状況によって、婚姻費用や養育費の額は変わらないのが原則です。
⑶ 借金と婚姻費用・養育費
借金があっても収入があれば、婚姻費用や養育費はゼロにはなりませんが、借金の理由等(生活費の補填、学費等)によっては、額の算定に影響してくることがあります。
借金を理由として義務者が破産したとしても、婚姻費用や養育費の支払義務はなくなりません。
収入によって決まるものですので、借金がなくとも、相手が無職や生活保護受給中であれば、婚姻費用や養育費の支払いを受けることは難しくなります。
⑶ お子さんの私立学校の学費と婚姻費用・養育費
夫婦双方の収入に基づいて婚姻費用・養育費の額は決まるのが原則ですが、算定表の金額はあくまで公立学校の教育費を前提としていますので、夫婦の合意で通学していた私立学校の費用等のうち、公立学校の教育費との差額分については、婚姻費用や養育費を定める際に、一つの事情として認められる可能性があります。
ただし、学費の差額の全額を上乗せするのではなく、夫婦双方の収入に応じて按分する方法がとられることが一般的です。
また、学費以外の入学金、交通費、塾代等をどの範囲で加算すべきかは、事案によって判断がわかれています。
私立学校の学費に限らない塾代、習い事の費用については、基本的には婚姻費用や養育費に上乗せで負担を求めることはできませんが、夫婦間で同意があった場合や、学習補助的な塾に通学させる必要性がある場合などには、負担を求めることができる場合もあります。
⑷ 婚姻費用・養育費の増額請求、減額請求について
取り決めをしたあと、仕事が変わった、病気になった、再婚した等の事情変更があれば、取決め後に増額・減額することができる場合もあります。
また、離婚時に「養育費はいらない」と言っていたとしても、その後の事情によっては、養育費の請求をすることができる可能性があります。
⑸ 婚姻費用・養育費と面会交流
面会交流の実施と養育費の支払は別個の請求なので、「養育費をもらっていないから面会交流をしない」「面会交流ができていないから養育費は支払いません」などという話は、法律上は通りません。
⑹ 未払いの婚姻費用・養育費について
裁判実務では、過去の未払いの婚姻費用や養育費については、請求時(調停申立時)までしか遡れないのが原則です。ただし、メールや文書等で、明確に請求している場合には、調停申立時ではなく、請求時までさかのぼって、未払いの婚姻費用等の支払いを認めた例もあります。
任意に支払っていた婚姻費用が、相場に比べてかなり高額だったときには、清算的財産分与として、多く支払った分が考慮されることもないわけではありません。
5 年金分割
⑴ 年金分割の対象となる年金について
「年金分割」という制度の対象は、婚姻期間の厚生年金・共済年金です。
企業年金などは財産分与で検討することになります。
⑵ 年金分割で年金はどれくらい増える?
標準報酬総額を分割するので、夫婦の年金額を足したものの半分をもらえるわけではありません。ある程度の額は、「この日に離婚が成立した場合の見込額」という形で、年金事務所で計算してもらうことができる。
⑶ 事実婚の場合でも年金分割はできるの?
事実婚の場合には、国民年金3号被保険者の期間のみ分割対象です。
⑷ 別居期間が長い場合にも年金分割は可能なの?
婚姻期間に占める別居期間が長くとも、特段の事情がなければ、婚姻期間中の厚生年金・共済年金については、年金分割の対象となります。
6 弁護士に相談すると・・・
離婚に伴う財産給付については、それぞれの事情によって回答が異なってくるものが多く、妥当な金額であるかどうかの判断はすぐにはつかないものもあります。
そこで、離婚の前に、あるいは離婚後早い段階で、弁護士に相談したほうがいいケースが多いと思います。
福岡西法律事務所の弁護士は、皆様の離婚に関する相談について、真剣に向き合い、アドバイスさせていただきます。相談料は、何度来ていただいても30分2,160円(税込)です。お気軽にご相談ください。