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離婚した場合に養育費はどのくらいもらえるのでしょうか?
子どもがいる夫婦が離婚した場合、子どもの親権者となり監護をしている親は、他方の親に対して、養育費を請求することができます。
この養育費に関して、よく私たち弁護士が相談を受けたり、知人と話をしている中で耳にするのが、「大した金額もらえないと聞いた。」「養育費ってもらえなかったり、途中で支払ってもらえなくなる人が多いんでしょう?」というようなネガティブなことです。実際にはどうなのでしょうか。
(1)養育費の金額
養育費の金額は、どのように決まるのでしょうか。
まず、お互いの合意があれば、合意で決まります。
たとえば、「A(夫)はB(妻)に対し、長男Cの養育費として、月額8万円を支払う。」と決めれば、それが法律的に有効になりますので、AはBに対してCの養育費として毎月5万円を支払う法的義務を負います。
この合意は、口頭でも成立しますが、あとからAが「やはり月に8万円も払えない!」といって翻意をした場合、「いやいや、毎月8万円支払うって言ったじゃない!」と言っても、否定される可能性がありますので、やはり公正証書など、書面で合意をしておくのが望ましいです。
このような合意ができない場合には、裁判所に養育費請求調停を申し立てることになります。
調停の中では、養育費の算定表が用いて相当な養育費を算定することとなります(裁判所のホームページで公開されています。http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)。この算定表は、一般的な家庭において、一般的に支出される生活費や各種費用が収入のうちどの程度を占めていて、どの程度養育費に充てられるべきかという観点に基づき作成されたものです。
ただし、これもケースに応じて様々な問題点が生じます。たとえば、
Q.子どもが私立の学校に通っている場合は、養育費が増額されるべきじゃないの?
A.算定表は、公立の学校に通っていることを前提としていますので、相手も私立学校に通わせることに同意している場合には、通常の養育費に上乗せすべきと考えられています。
Q.習い事の場合はどうなの?
A.習い事の場合には、私立の学校より比較的認定が難しく、毎月の養育費の中から捻出すべきと裁判所が考える傾向にあります。
Q.相手の収入が今年は去年より増える(または減る)けど、どのように収入をみたらいいの?
A.収入は、給与所得者の場合には基本的に前年源泉徴収票や課税証明書、自営業者の場合には前年の確定申告書をベースに認定します。これは、前年それだけの所得を得たのであれば、今年もその程度は収入があるだろうと推測できるからです。これに反し、今年は去年よりも確実に増える/減るということがあれば、抽象的な可能性ではなく、具体的に役職の変更や部署の異動、転職の際の雇用条件を示す資料を示して、立証をしていく必要があります。
Q.借金等の支払いがあるから、算定表の金額より毎月の養育費は低くしてほしい。
A.基本的に、借金があることは、養育費の算定に影響をしません。しかし、借金が夫婦生活や家族のために充てられたものである場合や、一方のために作った借金を養育費の支払義務者が支払っている場合などには、考慮される可能性があります。
といったことが挙げられます。
これは、養育費の算定に当たっての諸問題のほんの一部です。
自分に不利な条件であると知らないままに合意してしまうことを避けるためにも、正確な養育費の算定にあたっては、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
(2) 決定した養育費が支払われない場合
次に、養育費を合意したけれども、支払い義務を負う親から養育費を支払ってもらえない場合には、どのような方法をとると良いでしょうか。
この場合、強制的に養育費を回収しなければなりませんので、強制執行という手続きが必要になってきます。この強制執行がすぐにできるかどうかは、養育の合意がどのような形でなされたかにより、今後の手続きが異なってきます。なぜなら、強制執行をするためには、少し難しいですが「執行力」が裁判所から認められていることが必要なのです。以下をみてみましょう。
① 調停で合意した場合(あるいは審判がなされた場合、離婚訴訟で判決を得た・和解をした場合)や公正証書で合意をした場合
この場合、これらの合意は執行力を持っていますので、裁判所に強制執行の申し立てを行うことにより、相手方の給与や預貯金などの財産を差し押さえることができます。ただし、給与の場合には勤務先、預貯金の場合には銀行・支店名・口座番号など具体的な情報が特定できなければ差し押さえることができません。
② 口頭や自分たちで作った離婚協議書などの書面で合意をした場合
この場合には、執行力を持ちませんので、執行力を持たせるために、調停を申し立てる、あるいは公正証書を作成する必要があります。
以上のようにみてみると、養育費を支払ってほしい人にとっては、あらかじめ公正証書できちんと合意をしておくか、調停で養育費を決めてもらうことが大事だといえます。
(3) 合意した養育費の金額をあとから減額(あるいは増額)してほしい場合
養育費は、基本的には合意したときの双方の資力や状況を前提としていますので、その前提となった資力や状況に変動があれば、養育費の減額あるいは増額の請求をすることができます。
これらができる場合としては、たとえば、
① 転職をしたり、無職になったりしたことで、収入が大幅に増えた/減った場合
② 再婚相手との間に子どもが生まれ、扶養する人が増えた場合
が挙げられます。
この場合には、再度算定表を用いて、資力や状況変動後の養育費を算定し直します。
ただし、重要なのは、合意のときに、将来それらの変動が起こることが具体的に予見できていた場合には、それも含めて合意をしたと見られ、減額や増額が認められないこともあります。
また、その変動も、わずかな変動では認められず、一度合意した養育費の金額を変更しなければ不当な結果となるような著しい変動が必要だと考えられています。
以上、概略ではありますが、養育費についていくつかの問題を見てきました。
単純に養育費といっても、先にみたような多くの問題があります。なるべく養育費についての争いをのちにしなくてもすむよう、内容をしっかりとお互いに決めておくことが肝要です。その場合には、なかなか自分でインターネットを調べても分からないことがあると思いますし、何より、当事者間の事情によって、似たようなケースでも結論が異なることが多くあります。
養育費は、お金のことで、当事者双方にとってとても大切なことです。今後の養育費についての見通しをたてておくためにも、一度弁護士に相談されておくことをおすすめ致します。
私たち福岡西法律事務所の弁護士は、相談を大切にし、まずは弁護士に依頼せずにご自身で解決いただくことを目指したアドバイスをいたします。
相談料は、皆様が何度でもご相談いただきやすいよう、30分2000円(税別)となっております。
養育費のみならず、離婚に関する全体的な解決策をご提案致します。当事務所までお気軽にご相談ください。