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老朽化した建物を訴訟をせずに取り壊した事例

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事件の概要

Xは、土地と建物のオーナーであり、もともと居酒屋としてYに賃貸していたが、居酒屋の経営に行き詰まり、契約を解除した。
ところが、Yはガラクタと思えるような什器備品を残したまま退去しており、引き取りを要請してもまったく応じない。
残置物がある以上取り壊しができなくて困っている。

争点となるポイント

残置物の所有権は、Yにあるため、本来であれば所有権に基づく妨害排除請求訴訟を提起した上、判決を経て強制執行をする必要がある。しかし、どう考えてもガラクタしかない状況なのに、そこまでしなければならないのか?
訴訟提起をしない場合には自力救済となるおそれがあり、違法行為であるとして、場合によっては器物損壊罪として被害申告されかねない。
また、当該物件は、二つの小学校の通学路となっており、老朽化によって崩れてしまい、通学中の小学生が怪我をしてしまうおそれもあった。

解決

Yに対して、数回にわたり、内容証明郵便※にて残置物の引き取りを求めた上、建物収去の日時も予め伝えた上で、建物収去を実行した。
残置物に価値がなければ、事務管理(民法697条)を根拠として、代わりに収去することができれば、少なくとも刑事上の問題は生じない。

<解決までの期間>
2ヶ月


※内容証明郵便
郵便局が送った書面の内容を証明してくれる郵便のこと
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html

工夫した点や依頼者と協議したこと

Xは、別の弁護士に依頼をして、残置物の撤去を請求しようとしたが、別の弁護士は、金銭請求などを行ったばかりに、Yが憤慨し、話がまったくまとまらなくなってしまった。
Xの要望は、金銭ではなく、あくまで早期の解決を図りたいというものだった。
近隣の交番にも相談し、通学路として周辺住民が不安を感じていることなども聴取し、建物の状態も確認の上、Yに対して、あくまで協力してほしいという態度でお願いの書面を複数回出した。

この実績を書いた人

代表社員 弁護士/伊藤 拓

福岡県弁護士会所属/東京都中野区出身/平成21年弁護士登録(福岡県弁護士会)

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